2022年4月より、建築士の「省エネ説明義務制度」が始まっています。
建築士は、建築主に対してすべての建築物(新築及び増築)について、省エネ基準への適合性等について書面を交付して説明することが、義務付けられています。
建築士だけでなく、営業や工務に携わる者も、省エネに関する用語を理解して、お客様に正しく伝えることが必要です。
省エネの基本になる用語として「外皮」、「外皮性能基準」についても、お客様にお話しできるようにしておきたいものです。
住宅における外皮とは何か?
省エネ住宅について学ぶとき、「外皮」や「外皮性能」という用語が出てきます。ここでは一戸建て住宅における「外皮」について説明します。
外皮・熱的境界、外気等とは?
「外皮」の用語を理解するために、「外皮」、「熱的境界」、「外気等」の3つの用語について説明します。
外皮とは
専門的に外皮を説明すると、「外皮とは、熱的
境界を構成する部位のこと」です。
熱的境界とは
熱的に見て、住宅の屋外と室内を区分する
境界線を熱的境界と言います。 通常、熱
的境界になるのは、断熱材が入っている
部分を指します。
【外皮(上の右図を参照)をさらに詳しく説明】
・外気等※に接する天井、または屋根で小屋裏または天井裏が外気に通じていないもの。
天井断熱、屋根断熱の工法によって外皮になるかどうかが変わります。
・外壁
・開口部(窓・玄関ドア等)
・外気に接する床(ピロティ)・土間床
地盤面をコンクリート等の材料で覆ったものまたは床裏が外気に通じないもの
・基礎
土間床の外周部分の基礎(断熱工法によって細かく設定されています)
になります。
住宅の外皮性能と外皮性能基準について
建築物省エネ法においては、建築物のエネルギー消費性能(住宅の省エネルギー性能)の評価は、「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」の2つの基準を用いて省エネ計算を行います。
外皮性能基準について
住宅の外皮性能(外皮熱性能)基準は「外皮平均熱貫流率(UA)の基準」と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)の基準」によって構成されます。
【外皮平均熱貫流率(UA)とは】
外皮平均熱貫流率はUA値ともいい、住宅の断熱性能を数値化したもので、室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標です。単位はW/(㎡・K)で表します。
建物の外壁、屋根、天井、床、窓、ドアなどの各部位からの熱損失量を合計し、外皮面積の合計で割ると外皮平均熱貫流率(UA値)が算出できます。熱損出の計算箇所は、断熱の施工法によって異なるので注意が必要です。
外皮平均熱貫流率(UA値)[W/(㎡・K)]
=単位温度差当たりの外皮総熱損出量÷外皮の部位の総面積
地域区分別に外皮平均熱貫流率が規定されており、その基準値以下になることが必要です。また外皮平均熱貫流率(UA値)は数値が小さいほど断熱性が高い(熱の出入りが少ない)ことを示しています。
お客様の住宅現場が、どの地域に当たるのかを建築物省エネ法で定められた地域区分を見て基準値を調べてください。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)について
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)とは、住宅に入り込む太陽熱の割合で、太陽日射の室内への入りやすさを表します。さらに詳しくいうと、太陽熱は窓から直接侵入する日射熱と、熱伝導により窓以外の屋根や天井、外壁等から侵入する熱があります。それらを評価した冷房期における指標が、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)です。
計算は、住宅全体の日射取得量を合計し、天井、壁、床、窓などの外皮の合計面積で割った値で算出されます。
冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)
=単位日射強度当たりの総日射熱取得量÷外皮の部位の総面積
地域区分別に冷房期の平均日射熱取得率が規定されており、その基準値以下になることが必要です。値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高いということになります。
なお、1~4地域は冷房期の平均日射熱取得率の基準値はありません。
外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)を基準値以下にするには
外皮平均熱貫流率(UA)と冷房期の平均日射熱取得率を基準値以下にするための方法の一例です。
・各基準値以下になる断熱性能の断熱材や窓等の開口部の製品を選定する。
・建物が熱損出が少ない設計をします。
・建物形状を外皮面積が大きくならないように凹凸のない形状にする。
・窓の面積が大きすぎると外気の影響を受けるので、窓面積の検討をする。
・熱損出の少ない、窓の方位や配置を考える。
・断熱材の施工時に熱伝導などを防ぐ施工を行う。
これは一例ですので、企画・設計や施工を行う際に、その住宅に合う工夫を行います。
まずは、外皮と外皮性能基準の用語の正しい把握が、省エネ住宅づくりの第一歩です。
この用語説明が、お仕事に役立てば幸いです。