「先進的窓リノベ事業」の窓は、なぜUw1.9以下が必要なの?

「住宅省エネ2023キャンペーン」の中の、高断熱窓へのリフォームの補助支援事業「先進的窓リノベ事業」の交付申請が、2023年3月下旬の予定で始まります。

先進的という名称のように、補助金を申請できる窓仕様の断熱性能がUw1.9[W/(m 2 ・K)]以下で、非常に高性能です。
補助金のことを営業でお客様にお話しする前に、自分が理解しておいた方が良い点がありますので、今回は「先進的窓リノベ事業」では、なぜ省エネ住宅のリフォーム窓は、Uw1.9[W/(m 2 ・K)]以下が必要なのかを考えてみたいと思います。

Uwとは?
窓の断熱性能は、U値で表され、Uwと記載されます。U値は熱貫流率のことで、窓や壁などの部材がどれだけ熱が伝わりやすいかを示し、W/㎡Kという単位で表します。窓のU値(Uw )は、数値が0に近ければ近い程、熱が伝わりにくく断熱性に優れています。数値が大きい程、窓から失われる熱が多いことを示しています。

目次

なぜ補助金で、性能値が高い窓へのリフォームを推進するのかを知る

先進的窓リノベ事業が行われる背景

日本の既存住宅の窓は、右の図のように、いまだに単板ガラスを使用した窓が約7割というのが現状です。
窓は熱の出入りが一番多い箇所であり、夏は約7割、冬は約6割の熱が出入りしている状態です。もちろん壁や屋根などに断熱材を適切に入れ断熱性を良くすることは大切ですが、それだけでは断熱性や省エネ性を十分に向上させることはできません。
窓を高断熱な仕様にすることは重要です。

出典:経済産業省資料より

窓の断熱性向上は、住む人の健康・快適面はもちろんのこと、光熱費を削減することやCO2削減対策・省エネ観点でも非常に重要です。

2030年、2050年の省エネ住宅政策と密接な窓のリフォーム

政府は、2050年度にカーボンニュートラルの実現を目指しています。そこで2030年度までに温室効果ガスを13年度比で46%削減することを目標としており、家庭部門でも66%の削減目標を設定しています。

住宅建築部門でも脱炭素化の取組が必須となっています。
そのため、住宅・建築物についても2050年の脱炭素化を目指して、次のようなスケジュールと目標が立てられています。

 ■ 2025年4月
  小規模住宅を含むすべての新築建築物は省エネ基準への適合義務化
 ■ 2030年度
  ・新築住宅・建築物はZEH・ZEB水準(ZEH・ZEB基準の水準)の省エネ性能の確保を目指す
  ・遅くとも2030年までに、誘導基準(ZEH水準)への適合が8割を超えた時点で義務化となる
   省エネ基準をZEH水準に引き上げて、適合義務化。

 ■ 2050年度
  ストック平均でZEH水準(ZEH基準の水準)の省エネルギー性能の確保

『ZEH』と「ZEH水準」は、内容・意味が異なりますのでご注意ください。

2030年の温室効果ガスの削減目標、2050年のカーボンニュートラルの目標、住宅・建築物の脱炭素化に向けた目標達成には、既存住宅の断熱性の向上強化が重要です。

特に既存住宅については、省エネ対策は、熱損出の大きい窓に対する改修(リフォーム)が重要です。そのために3省連携で補助施策を打ち出しています。

リフォームで窓の数値、Uw1.9以下ってどういうこと?

「先進的窓リノベ事業」の補助の対象工事では、窓は熱貫流率(Uw)1.9以下等、建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるもの等、一定の基準を満たすものと記載されています。

補助金対象の窓のグレードとされるSS、S、AのUwを見ると、下の表のようになっています。
         A:Uw1.9以下  S:Uw1.5 以下  SS: Uw1.1 以下 (単位は[W/(m 2 ・K)])

先進的窓リノベ事業の窓のグレード別のUw

※1 大:ガラス(一枚)の面積 1.4m2以上。サッシ(一箇所)の面積 2.8m2以上。

※2 中:ガラス(一枚)の面積 0.8m2以上 1.4m2未満。サッシ(一箇所)の面積 1.6m2以上 2.8m2未満。

※3 小:ガラス(一枚)の面積 0.8m2未満。サッシ(一箇所)の面積 1.6m2未満。

※4 ガラス交換は、箇所数ではなく、交換するガラスの枚数を乗じて算出。ドアに付くガラスのみ交換の改修は対象外。

窓の熱貫流率は、最低ランクのAで、1.9以下でなければならないとされています。

建材トップランナー制度の窓の2030年目標水準値は、Uw2.08

建材トップランナー制度は、2013年に経済産業省資源エネルギー庁が建築材料(断熱材)を対象とした「建材トップランナー制度」を施行しました。2014年には、窓(複層ガラス 及びサッシ)が対象となりました。

2022年3月10日に、総合資源エネルギー調査会の省エネルギー小委員会、建築材料等判断基準ワーキンググループが、「サッシ及びガラスに関して建材トップランナー制度の目標基準や判断の基準等の見直し」についてのとりまとめを発表しました。
その背景には、2050年のカーボンニュートラルの実現への展望の中で、建材についても、2030 年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指すことがあります。

そのとりまとめの中で、
  2030年の建材トップランナーにおける窓の目標値は、Uw2.08[W/(m2 ・K)]と設定されました。


 ※2030 年度にZEH基準の水準の省エネ性能の住宅を実現するための2030年の窓の目標基準値を、2030 年に
  求められる新築住宅の性能から逆算して算出しています。
  その目標水準値から、2030年のサッシや複層ガラスの目標水準値を設定しました。
  詳細は、経済産業省「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会

  建築材料等判断基準ワーキンググループ サッシ及びガラスに関するとりまとめ」に記載されています。

さくら

建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるものとは、熱貫流率が2.08[W/(m2 ・K)]以下の窓ということになります。

窓の性能とJIS基準 熱貫流率1.9[W/(m2 ・K)]のJISの性能等級

JIS 基準の断熱性能等級に、上位等級H-7とH-8が追加

窓の性能表示制度で参照されているJIS A 4706 が、2021 年2月に改正されました。窓の断熱性のJISの性能等級については、改正前はH1~H6まででしたが、省エネ等の推進や高断熱窓が製品化されていること等によって、改正後に上位等級のH7とH8が追加されました。また、日射熱取得性の評価指標が新たに追加されました。現在日本で販売されている窓製品は、このJIS A 4706の性能等級を満たしています。

JIS A 4706の改正前と改定後のの断熱性の性能等級(出典:経済産業省資料より)

JIS基準の断熱性能等級と補助金でのグレードSS、S、Aの熱貫流率の関係

JISの断熱性の性能等級は、H-6:Uw 1.9[W/(m 2 ・K)]、H-7:Uw 1.5[W/(m 2 ・K)]、H-8:Uw 1.1[W/(m 2 ・K)]です。
先進的窓リノベ事業のグレードSS、S、Aの熱貫流率は、JISの断熱性の性能等級H-6~H-8の数値と一致していることが把握できます。
現在、ZEHや省エネ性能の高い住宅やリフォームがさらに増えつつあり、H-7~H-8に相当する高性能な窓も製品化されています。
既存住宅に、JISの断熱性の性能等級H-6、「先進的窓リノベ事業」の熱貫流率1.9[W/(m2 ・K)]以下の窓を使用して、ZEH水準の省エネ性能の家へという先進的なストーリーが伺える補助金だということが理解できます。

ZEH水準の省エネ性能の家を目指す、窓の熱貫流率とは

下の図は、地域区分別の省エネ基準に適合する窓、ZEHに適合する窓、ZEH+に適合する窓の熱貫流率の一例です。

地域区分別の省エネ基準に適合する窓、ZEHに適合する窓、ZEH+に適合する窓の熱貫流率の一例
※省エネ基準の熱貫流率は、開口部比率(ろ)による。ZEHとZEH+の熱貫流率は、
一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会(建産協)「ZEHのつくり方」を参照

熱貫流率1.9[W/(m2 ・K)]以下というと、下の図を見るとわかりますが、現行の省エネ基準よりもかなり数値が小さく、ZEHの強化外皮基準に相当する数値です。
強化外皮基準というと、BEI=0.8で、ZEH水準(ZEH基準の水準)の省エネ性能の住宅の断熱性能です。

2050年にストック平均でZEH水準の省エネ性能の家を確保するためには、ZEH水準の省エネ性能の断熱性、窓であれば熱貫流率1.9[W/(m2 ・K)]以下にして断熱性能を向上させるためのリフォームの補助金という狙いが理解できます。住宅の断熱改修よりも手軽な窓のリフォームで省エネ対策をお客様にアピールすることができる補助金です。

窓の改修は外壁改修などのリノベーションと行うケースも多いため、リフォーム営業の幅をより広げるために、断熱改修や耐震改修と共に行う窓の改修についても勉強をしておくと良いと思います。

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