『待って!家選びの基準変わります(国土交通省の漫画冊子)』の意味すること

2025年の原則全ての新築住宅・建築物の省エネ基準適合義務化や、ZEH水準の省エネ住宅の推進が、今年度から本気度を増してきたように感じます。今年住宅を購入する方にも影響する問題のため、住宅を造る側、販売する側も消費者に対してきちんとした対応を行うことが大切です。

目次

国土交通省の漫画冊子『待って!家選びの基準変わります』の狙いは?

2023年1月23日、国土交通省のホームページに、漫画サッシ『待って!家選びの基準変わります』が公開されました。新築住宅を建築・購入する消費者や新築住宅販売者向けの漫画冊子です。

この冊子の趣旨は、
 新築住宅を建てる、購入する時にはZEH水準の省エネ住宅を選ぶようにしましょうというものです。

出典:国土交通省

ストーリーの内容は
 2025年4月に、原則すべての新築住宅などは省エネ基準適合義務化になる
  2025年に現行の省エネ基準に適合している住宅は、最低ラインの省エネ基準の家になる。
 2030年は省エネ基準の最低ラインは 「ZEH水準の省エネ住宅」になるので、2025年の省エネ基準の
  住宅は2030年には時代遅れになる。
 ・現行の省エネ基準の家よりも「ZEH水準の省エネ住宅」、ZEH水準の家に太陽光を搭載した家の光熱費は
  お得になる。
 ・ ZEH水準の省エネ住宅は住宅ローン減税、フラット35S、補助金が使えてお得である。

という内容で、消費者だけでなく、住宅を販売・営業する者にとってもわかりやすい内容で、今後の住政策を見据えて営業する姿勢も検討する必要があると気づく冊子になっています。

ユニークなキャラクターの「ZEHさん」

漫画冊子のキャラクター「ZEHさん」の風貌がすごい!

この漫画冊子のキャラクターは「ZEHさん」。
頭・顔は屋根に煙が出ている煙突が付いた家、昔のウルトラマンみたいな目、赤シャツの胸にはひらめき電球のイラストに丸に「ゼ」マーク、赤長靴に赤手袋という滑稽で特徴的なキャラクターです。

ZEHなのにしゃべると煙突から煙が出ているのもなんだか不思議で、面白いのです。ZEHの計算を考えると、たぶん化石燃料を使用した設備機器からの煙ではなく、一生懸命にしゃべった時の勢いの水蒸気なのでしょうか。
これは漫画ですから気にするところではないと言われそうです。

語尾に必ず「ゼッチ!」がついている

話し方は、語尾に必ず「ゼッチ!」がついていて、ZEHを強調しています。例えば「これからは 省エネ住宅が 標準になるんだ ゼッチ!!」という話し方で、独特な雰囲気でユニークな「ZEHさん」ですが、話し言葉に「ゼッチ」というのが常に入るので印象的です。
この「ZEHさん」は、イベントでゆるキャラみたいに出てくるのかしら?
どんな声なのかしら?聞いてみたいと、期待される感じのキャラクターです。
「ZEHくん」ではなく「さん」付けなのもなぜでしょうか? たぶん住宅購入者向けなので、大人のキャラなのでしょうか。

さくら

漫画冊子の内容は、非常に真面目で、具体的でわかりやすい内容ですので、消費者へのアピール度は高いと思います。

「ZEHさん」から見る2050年、2030年の省エネに関する住政策

国土交通省は、今までも消費者向けのわかりやすい漫画冊子作成していましたが、今回の冊子は、硬いお役所イメージを吹っ切った、思い切った企画で作成されていて、省エネ住宅の推進に対して本気度が見えるように思います。

わが国は2050年のカーボンニュートラルの実現を目指して、

2050年
ストック平均でZEH・ZEB水準(ZEH・ZEB基準の水準)の省エネ性能を確保するとともに、導入が合理的な住宅・建築物に太陽光発電設備等の再生エネルギーが一般的になることを目指す。

2030年度までに
誘導基準(ZEH・ZEB水準)への適合率が8割を超えた時点で、省エネ基準をZEH・ZEB水準の省エネ性能に引き上げ。

2030年
新築の住宅・建築物にZEH・ZEB水準の省エネ性能を確保するとともに、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を導入することを目指す。

3つの目標を見ると、胸に「丸ゼ」マークをつけている「ZEHさん」ですが、ZEH水準の省エネ住宅+太陽光発電設備を搭載することで、最終的にはZEHを普及させるという意図もあることが把握できます。2050年の目標に至るために、2030年の中期目標の達成を目指し、新築住宅全体の省エネレベルを引き上げることが、緊結の課題であることが理解できます。

新築住宅のZEHの割合はまだまだ低く、2020年度の目標達成が出来ていない

漫画のキャラクターの「ZEHさん」が語尾に「ゼッチ!」をつけてZEHを強調していましたが、ZEHを消費者に認知してもらいたい狙いがあると思われます。

新築住宅におけるZEHの割合は、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す。」というZEHの達成目標が設定されていました。

出典:国土交通省

 ここでいうのはハウスメーカー等であり、ハウスメーカーだけを指すわけではありません。
しかし、 国土交通省が算出した2021年度の新築注文戸建住宅の着工数からZEHが建てられた割合は、たったの約1割でしかありませんでした。
ハウスメーカーは、ZEHの供給戸数は2020年度は5割を超え、2022年度は約6割だったので、2020年の目標は実現できています。しかし、一般工務店ではZEHの供給率はわずか 26.8%です。ZEHになると高くなる建築費などの問題がありますが、ZEHに対する認識がまだまだ定着していないこともあります。

さくら


「ZEHさん」が「ゼッチ!」を語尾につけてアピールするのも理解できますよね!

今後は住宅を販売する者の省エネ提案レベルが問われる!

この冊子をお客様がご覧になるということは、住宅をつくり販売する側は、省エネ基準適合の新築では2030年以降は既存不適合住宅になる可能性がとても高いですし、資産価値が下がる可能性もあります。そこでリフォームを行うにも大きな手間や金額が工事にかかる可能性も高いため、今からZEH水準の省エネ性能以上の新築住宅を建築して、販売した方が良いということになります。

建築企画・工事対応はもちろんの事、営業提案時でも、「省エネ基準」、「ZEH水準」、「ZEH」という3つのキーワードで、お客様が理解できるように話をすることが重要になります。

今の時点で、お客様は、「省エネ基準」、「ZEH水準」、「ZEH」の違いが良く理解できていない状態です。

この3つのキーワードを区別した設計や建設技術、営業提案が、今後の経営を変えると言っても過言ではありません。

さくら

※ZEHとZEH水準の省エネ住宅の違いについての記事は、
 『ZEH』と「ZEH水準(ZEH基準の水準)」の用語の違いは? をご覧ください。

『待って!家選びの基準変わります(国土交通省)』の漫画冊子は、2月中旬頃から全国の住宅展示場などで配布されます。また国土交通省は専用窓口を開設して希望者に対して送付する予定だそうです。
詳細は国土交通省のホームページに掲載されるようですので、またチェックしたいと思います。

漫画冊子の内容は、国土交通省のホームページに掲載されています。
『待って!家選びの基準変わります(国土交通省)』をご覧いただくとPDFの漫画冊子を読むことができます。

参照:国土交通省報道発表(2023年1月23日)

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