2023年新春、皆様はどんな抱負や目標を立てられたでしょうか。今年は数字目標だけでなく、社会状況も考慮した広い視野での目標を立て活動する年だと考えます。
世界の情勢は住宅・リフォーム業界に密接に繋がっていると感じた2年間
「まさかこんなことが起こるとは」ということが、2020年から沢山ありました。今まで、世界情勢には無関心だった方々も、住宅・リフォーム業界は世界の問題と繋がっていると切実に感じた2年間ではなかったでしょうか。
コロナショックから大きな影響が始まった
2020年1月に日本で新型コロナウィルス感染症の患者が発生してから、2023年1月の現在に至り、住宅・リフォーム業界には、さまざまな影響を与える事象が起こりました。まだまだ2019年の新型コロナウィルス感染症の発生以前の状況には、完全に戻ることはなさそうです。
2020年~2022年前半は、新型コロナウィルス感染症によってイベントなどの集客活動は自粛・中止で、対面での営業活動もままなりませんでした。住宅設備などの製造・供給不足による納品遅れが起こり、そこに2021年3月に始まったウッドショックで、新築住宅やリフォーム工事がストップし、そのうえ価格の高騰も引き起こしました。
住みながらのリフォームは、お客様もコロナウィルスに感染しないかという不安で敬遠し、工事延期や中止のケースも増えて、まさに住宅・リフォーム業界は「コロナショック」を受けました。
この時期は対面ではお会いできずリモートで、集客やこの事態をどう乗り切るかについて、皆さんからとてもたくさんの相談を受けました。本当にお互い大変な時期でした。
ロシアのウクライナへの侵略で住宅・リフォームの価格も上昇
さらに2022年2月24日に、ロシアがウクライナへの侵攻を始めたことで、ロシア材が入手できず構造合板などが不足し、資材が値上がりして住宅の価格は高騰しました。国産材も供給不足で値段が上昇していますし、鉄鋼、アルミニューム、グラスウールなども今も値上がりしており、多くの住宅会社やリフォーム会社は打撃を受けました。価格の値上げもせざる負えない状態になりました。
ロシア・ウクライナの戦争により、世界的なエネルギー不足問題と高騰で、エネルギー資源を海外に頼っていた日本もエネルギー問題に突入し、エネルギー不足から始まり、電気代をはじめ様々なものの価格が上昇し、住宅・リフォーム業界もさらに大きな影響を受けることになりました。
今は円高は少し落ち着きましたがその影響、株価の急激な変動、物価上昇で家庭の経済事情を圧迫し、新築やリフォームの購買力にも影響がでています。
住宅・リフォームの成長の予測が大きく外れた2年間だった
新築はともかく、リフォームはもっと成長し、リノベーションも増加するはずでした。誰が新型コロナウィルス感染症やウッドショック、ロシアとウクライナの戦争で、このような状態になると予想できたでしょうか。予測は大きく外れました。
今はコロナ感染症のパンデミックからは落ち着き、経済活動は正常化に向かっていますが、根本的な問題が解消されないと住宅需要やリフォーム需要は正常化するとは考えられません。
住宅ローンの金利は上がらないという予想も崩れてしまい、今年は固定型の住宅ローンの金利も上がることになります。お客様が選択される住宅の価格帯や購買意欲にも影響が出ます。
住宅ローンの金利が上がることは、今すでに固定型の金利で契約しているお客様には影響はありませんが、今後ローンを組む方には影響しますので、新築や大型リフォームの受注にも影響があります。
先の予想がつかないからこそ、現状から今後の戦略・戦術を考える
なかなか景気が上昇しない現在は、高い注文住宅は売れにくく、お客様はローコストや中級価格帯の住宅の購入にシフトしています。また政府は国産の木材供給と使用に対する支援を行っていますが、急に使用に耐える国産材が十分に適切な価格帯で生産され、供給できるわけでもありません。その中で、「2023年この状況をどう乗り越えるのか、来年の抱負と計画をつくる」研修を行いました。
新築部・リフォーム部の収益を確保し、新たな挑戦を行う
反省で見いだせたのは危機管理能力のなさと、根本的な解決を考えなかったこと
まず、2020年からの業界の状況を再確認し、自社のその時々の状態や営業・工事の状況を振り返りました。その中で、社員の方々からいろいろな反省が上がりました。
●「その時々の状態に振り回され、社会情勢と危機的状態の把握が甘かった」
●「困惑し、メーカーや商社に納品を急がせるだけで、自分たちは何の手も打たなかった」
●「幹部がどうにかすると思っていた」
●「状況を諦めていて、何も考えずに忙しくもないのに何故かバタバタしていた」
●「集客の戦略も戦術もなく、地域やお客様を回ってチラシを配っていた」
●「こんな危機的状況が起こるとは考えておらず、将来は受注が厳しくなる状況はわかっていたが何もしなかった」
社員の方からでた結論は、こんなことが起こるとも思わず、危機管理能力がなかったことでした。
危機的な社会状況にも関わらず、収益を出す方法も真剣に考えず、数字を上げることばかり考えてやみくもに動き、2年間根本的な解決法は何も考えてこなかったという反省でした。
今ある危機を乗り切り、生き残るために考えて実践計画を立てる
その他にも自分たちの業務の問題点が出た後、改善の話に進みました。たくさんの良い意見がでましたが、具体論を詳しくは書けませんので、概要のみ記載します。
■収益確保の合言葉を共通言語に、業務改善を行う
このような現状の中で値引き要求が激しくなり、粗利率が下がっている。
粗利率を確保し、収益性を少しでも良くする方法について、営業活動の無駄、工事の無駄など、
すべての業務サイクルの中で収益が上がらない業務の改善など具体的に検討。
■自社の強みと特徴を考慮した、地域に売れる住宅・リフォームを検討する。
・国産材を使用する住宅企画を行う。
国産材を扱う製材所と連携し、森林認証を取得した材で木造住宅をアピールなど。
・高価格帯の住宅はそのままにし、利益を確保できる中級価格帯の企画を考える。
生活の快適さや空気質、省エネ性能を確保した企画と最新のデザイン性。
・中古(既存)住宅のリノベーションへの技術とリノベーション提案営業力を上げる。
・経済性を考えた省エネ性能確保と光熱費を下げる住宅・リフォームの企画。
・既存顧客の再開拓によるリフォームとアフターメンテナンスによるファン化率を上げる。
など。。。
かなり多くの意見が出ました。
まずは、出来ることを選択し、その優先順位を立てて、全員参加の実践企画グループ分けをして実践計画に入りました。
新築・リフォームで生き残るためにこれから取り組まなければならないこと
既存住宅のリノベーションやリフォームで受注の活性化
戸建住宅のリノベーションは、住宅構造の知識・技術に強いことが条件です。
新築住宅の建築技術・工事に優れていることは、リノベーションで勝てる条件となります。私の経験から言えることですが、設備取換や構造を触らないリフォームは、競争も激しい状況ですが、本格的に構造も触ることができるリノベーション技術があると差別化になります。
■ 既存住宅の現況調査(インスペクション)技術
目視のインスペクションを超えた天井・床下まで見て耐震の判断ができる技術
■ 耐震工事の提案力と、耐震診断・計画・耐震工事技術
間取り変更に対応して、耐震性を判断する力も必要
■ 断熱改修の提案能力と工事技術
断熱材の改修や方位による窓の適切な提案
■ 断熱改修と併せて光熱費を削減する(一次エネルギー消費量を減らす)設備提案力
太陽光発電設備・蓄電池だけでなく、換気や冷暖房設備・節水水栓等の計画も必要
■ 間取りの提案力と機能性を持ったデザイン力
■ 安心R住宅や長期優良住宅化リフォームなどの補助金を申請できる知識をつける
お得にリフォームできる提案力と技術力が今後必須になる
★営業的に重要なポイントは、中古住宅の販売などの既存住宅の取り扱いができる不動産業者との
提携や、可能であれば宅建業を自社で行う仕組みをつくることです。
新築で生き残るためには
新築は、将来的に需要は減少しますが、地域での新築や建て替えの要望は必ずありますので、地域との密接な係わりや技術的な実力があれば、新築業を完全に辞めてリフォーム業のみに転身する必要はないと思われます。
■ 最低でもZEH水準の省エネ住宅(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など)を企画する
ZEH水準の家であれば、価格的に抑えることが可能です。 気密・断熱レベルが上がるため、
防露措置と気密確保の工事技術も欠かせません。
■ 光熱費を減らす工夫と災害時に対応できるレジエンス機能はこれからは必須
ZEH水準の家であれば、換気設備・冷暖房設備などの高効率の設備を使用するため
一次エネルギー消費量を減らし、光熱費も減らすことは可能です。
しかしそれだけではなく、更に光熱費をお得にし、災害時に対応できる太陽光発電設備・
蓄電池などの提案も必要です。価格は上がりますが、政府目標は2030年には太陽光発電
システムが新築戸建て住宅の6割に導入を踏まえてお客様には提案をし、価格が合わな
ければ将来のリフォームで対応もできます。
■ 住宅ローン金利の上昇を踏まえて、住宅ローンの比較提案などの知識がさらに必要
■ 新築住宅は高性能な省エネ住宅にすると補助金支援があるため、その対応能力が必須
■ デザイン性や魅力ある生活空間の企画力が重要
★その他、生活を便利に快適にするIoT住宅の機能は、今のお客様の要望が高く、家に付加価値も
つけることができます。
これを魅力的に効果的に導入しても、価格を少しでも抑える企画ができるかが鍵となります。
協力会社との関係強化とチームワーク
最近は職人不足による職人確保が難しくなる傾向があります。特にリフォーム業では、仕事が多く取れない場合は職人さんが確保できず工事が遅れるという状況になっています。また職人さんの年齢が上がり、技術が必要な木造の工法での建築が難しくなっています。
■ 協力会社・職人さんとの関係とチームワークを強化
■ 省エネなどの新しい技術も必要なため技術向上勉強会が重要
■ インボイス制度についての指導が必要
2023年10月のインボイス制度の導入により、一人親方がいなくなるということが懸念
されています。インボイス制度に対する協力や指導も、職人さんの確保に必要です。
仕事が継続して受注できる体制強化
受注できなければ、協力会社の確保は難しく、提案力や技術を高めても腕を振うことができません。
■ アフターメンテナンスの体制を強化
既存のお客様との縁を深め、受注をとるために、アフターメンテナンスやちょっとした補修の相談
も行い、良好な関係を保ちたいものです。
■ 工事ミス、マナー違反をなくす
工事ミスやマナー違反は、地域のお客様の信頼を失います。 勉強会も行い、ミスやマナー違反での
苦情をなくす努力をたゆまず行う努力を怠らないことです。
■ 集客・受注の企画を行う
ネット活用、急な呼び出しなどのリモート対応、SMS、チラシ、ミニイベントなど、継続して
行います。
今の世界情勢や経済情勢に耐えて跳ね返す提案や企画の準備は、今後もし他の危機があっても回避する力をつける準備にもなります。
経営者の立場からの戦略は大事ですが、社員の立場からも今の状態を変えることは必ずできます。社員同士で戦略や戦術を考え、新しく挑戦することにより、開けることが必ずあるはずです。
年始に皆でミーティングを行い、受注活性化のきっかけ作りをしてみはいかがでしょうか。