少し前のことですが、あるメーカーさんから「売れるZEHリフォーム」というテーマで、家電販売店さん向きの研修依頼の話がきました。非常にレベルの高い研修テーマなので、要望をじっくり聞いてみたらZEHの意味が違っていてとても驚きました。
笑い話のようなZEHの意味を誤解していた営業マン
研修の要望のお話の中にあったのですが、エコキュート、LED照明、システムバス、太陽光発電システム、HEMS、二重サッシの販売をするためのリフォームを、「ZEHリフォーム」としてキャッチーなコピーにして、販売戦術として家電販売店さんに浸透させていました。
特に、太陽光発電とHEMS、蓄電池を販売する店舗は、既存の家に太陽光発電システムとHEMSや蓄電池を設置することで省エネが実現するということで、「ZEHリフォーム」と本気で思ってお客様にお話をして販売活動をしていました。
ZEHは補助金も継続的に出ており、すでに定義や営業方法が定着しており、営業側は理解して活動していると思っていましたが、そうではないことに気づきました。
笑い話のような本当のお話ですが、お客様に対してZEHリフォームと言って販売していることは、笑い話にはできないと思いました。
『ZEH(ゼッチ)』とは何か? (広義のZEHについて)
『ZEH』を理解するためには、省エネルギー住宅とは何か、省エネ住宅をつくる方法について、先に説明しなければ十分ではありませんが、ここでは『ZEH』の概要を書きます。
広義の『ZEH』の定義
ポイントは「住まいの年間のエネルギー収支をゼロにする」ということで、住まいのエネルギーを高効率な設備を使用して減らした住宅という意味ではありません。すなわち、エネルギー収支を「ゼロまたはゼロ以下」にしないと広義のZEHと呼ぶことができません。
住まいのエネルギー収支をゼロにする住宅とはどういう意味なのか?
住いの年間のエネルギー収支をゼロにする『ZEH』とは、どういう住宅なのでしょうか。
まずは家の断熱性と気密性を確保する
住宅は、断熱材、窓、玄関ドア、屋根等で囲まれてつくられています。断熱性や気密性が良くないと夏は日射などでの家の中が厚くなり、冬は冷気が入り込んだり暖房の熱が外に出たりして、温熱環境が悪い状態になります。つまり、暖房や冷房を行っても断熱性や気密性が悪い場合は、冷暖房の効率が悪く、光熱費もかかり、家の中の快適性も確保できません。
ZEHの第一条件は、適切な断熱材での施工や断熱性の良い窓や玄関ドアなどを設置して気密施工を行い、熱の出入りの少ない省エネ住宅にします。
『ZEH』で重要なのは、使用する断熱材や開口部については、建築物省エネ法による地域区分に基づいて、地域によって数値が決められていますので、その数値に基づいた材料を選び、プランを行ったうえで、適切な施工を行う必要があります。
高効率な設備機器の導入で、家の中のエネルギーを効率よく使う
家の中では設備機器を用いて、暖房、冷房、換気、給湯、照明などのエネルギーを消費しています。省エネでない設備機器を使うと、家の中のエネルギーが無駄に使われる状態になります。
そこで重要なのは、暖房、冷房、換気、給湯、照明などの設備機器は、省エネ性能が高く高効率な製品を設置することです。例えば省エネエアコン、エコキュート、エネファームやエコジョーズ、24時間換気設備、LED照明などのエネルギー消費効率の良い省エネ設備を設置します。
これらの設備機器も、『ZEH』にするためにはクリアしないといけない基準があり、それに適合させます。
家の中で使用するエネルギーを基準値より20%以上減少させる
広義の『ZEH』の規定では、家の中で使う基準となるエネルギー消費量(「一次エネルギー消費量」といいます)から、高断熱・高気密で高効率な設備機器を導入した後の家では、一次エネルギー消費量が20%以上減っていなければなりません。減少したかどうかは、一次エネルギー消費量の計算によって算出します。
家の中の一次エネルギー消費量を、太陽光発電設備の搭載によりゼロ以下にする
高断熱・高気密で高効率設備を導入して、家の中の一次エネルギー消費量が20%以上減ったところに、太陽光発電システムを搭載して、更に一次エネルギー消費量を減少させます。太陽光発電システムを搭載して、家の中の一次エネルギー消費量がゼロ以下になれば『ZEH』になります。一次エネルギー消費量がゼロ以下にするためには、太陽光発電システムの搭載量、発電量のプランが重要になります。
太陽光発電システムの発電量が少ない地域があり、広義のZEHにできないケースもあります。
太陽光発電システムの搭載量が少なく発電量が少ない狭小住宅、屋根が陰になる建築場所や多雪地帯など、太陽光発電システムの発電量の少ない地域は、広義の『ZEH』(創エネを含む省エネ率は100%以上)にすることが難しいケースも多々あります。その場合は、Nearly ZEH(創エネを含む省エネ率は75%以上)やZEH Oriented(太陽光発電システムを搭載しない)にして補助金の支援を受けることができます。
『ZEH』とは(国土交通省の定義)
ZEHとは
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」
※出典:国土交通省資料より
2050年カーボンニュートラルに向けたZEHの推進
政府は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、住宅・建築物においては『ZEH』の推進を行っています。
2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すということを掲げ、『ZEH』推進のために毎年補助金支援が行われています。新築・リフォーム共にZEHの補助支援策がありますので、国土交通省のホームページを参考にしてください。
追記:スマートマスター認定資格
省エネ住宅や『ZEH』に関して、一般財団法人 家電製品協会・NHK出版より『スマートマスター資格試験』のテキストが出版されています。このテキストを読むと、省エネ住宅やZEH、省エネ設備や家電の最新の知識がすべて網羅できます。テキストで学び、スマートマスターの認定試験を受け合格すると、スマートマスターの資格が取得でき、スマート化する住まいと暮らしのスペシャリストとして営業活動をすることができます。
『スマートマスター』の住宅・リフォームに関する章(スマートハウスのコア知識 1章~5章)を桜川 茜依子が書いております。
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