国土交通省や経済産業省の資料を読んでいると、ZEHに関連する用語として、『ZEH』、「ZEH基準の水準」、「ZEH水準」、「ZEH相当の水準」「ZEHレベル」「ZEH基準相当」など、いろいろな表現の用語があり戸惑うこともあるのではないでしょうか。
また、令和4年度税制改正による住宅ローン減税で、新しく「ZEH水準省エネ住宅」の区分ができ、2025年までの優遇策が示されています。
参照:国土交通省ホームぺージ「住宅ローン減税」
「ZEH水準」、「ZEH基準の水準」、「ZEH水準省エネ住宅」などの関係は?
基本的には「ZEH基準の水準」、「ZEH水準」、「ZEH相当の水準」、「ZEHレベル」、「ZEH基準相当」は同じ意味の言葉です。
政府は、2050年度のカーボンニュートラルの実現を目指し、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」としています。
「ZEH基準の水準の省エネルギー性能を持つ住宅」が、「ZEH水準省エネ住宅」ということになります。
『ZEH』と「ZEH水準」の違いを知るための『ZEH』の判断基準の確認
『ZEH』と「ZEH水準(ZEH基準の水準)」についての違いを述べる前に、『ZEH』とは何か、その判断基準は何かを確認します。
『ZEH』とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのこと
「ZEHの定義と意味を正しく理解しよう」の記事も参考にご覧ください。
ZEHの判断基準を把握して、ZEH水準との違いを知る
まず、ZEHの判断基準についてみてみましょう。
ZEHをつくるためには、次の3つ要件と判断基準が必要です。
1.強化外皮基準に適合させる:住宅の外皮性能基準を定められた基準値以下に適合させる
① 建物に入る熱を小さくし、日射熱の影響を受けないように、外皮を建築物省エネ法の地域区分(1~8区分)
で定められた冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)を基準値以下に適合させる。
② 気密・防露の確保などの留意事項を満たす。
➂ ①と②を満たしたうえで、建物の熱の出入りがしにくくするように、建築物省エネ法の地域区分
(1~8区分)によって定められた外皮平均熱貫流率(UA値)を基準値以下に適合させる。
※ZEHの外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)が次の表の値になります。
★国土交通省の建築物省エネ法による地域区分の資料:地域区分新旧表
★外皮性能基準は、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)と外皮平均熱貫流率(UA値)から構成されています。
2.基準エネルギー消費量(太陽光発電システム等の再生エネルギーを除く)から高効率な設備を
用いて一次エネルギー消費量を20%削減。
3.太陽光発電システム等の再生エネルギーを導入(容量不問)して、基準一次エネルギー消費量から
100%以上の一次エネルギー消費量を削減する。
それによって年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロ以下にする。
「ZEH水準」を理解するための「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」
住宅性能表示制度(平成 12 年 4 月 1 日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづき、同年10月に運用開始された制度)によって、国土交通大臣が住宅の性能を表示するための共通ルールを、「日本住宅性能表示基準」として定めています。
日本住宅性能表示基準の中で、住宅の省エネ性能は、「温熱環境・エネルギー消費性能に関すること」という項目の中で、「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」によって評価されます。
断熱等性能等級で、ZEH水準を把握する
断熱等性能等級は、現在は等級1~等級7まで定められています。
断熱等性能等級の等級4と等級5の外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)を表に示します。
等級4は、現行の建築物省エネ法の省エネ基準です。等級5は、『ZEH』のUA値、ηAC値と同じ数字です。
つまり、断熱等性能等級の等級5は、「ZEHの水準(ZEH基準の水準)」ということになります。
一次エネルギー消費量等級でZEH水準を把握する
一次エネルギー消費量等級は、「BEI(一次エネルギー消費性能)」の値で決めらえています。
BEI = 設計一次エネルギー消費量」 ÷ 基準一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量等級の等級6は、基準一次エネルギー消費量(太陽光発電システム等の再生エネルギーを除く)から一次エネルギー消費量を20%削減した数値となりますので、ZEH水準(ZEH基準の水準)となります。
『ZEH』と 「ZEH水準」の違い
『ZEH』の場合は、太陽光発電システムなどの再生エネルギーを利用して、家の中の一次エネルギーを0以下にすることが要件です。
しかし「ZEH水準」の省エネ住宅は、日本住宅性能表示基準の「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」に適合する住宅ということになります。
重要な違いは、『ZEH』の定義では、再生エネルギーの導入が必要でした。
しかし「ZEH水準(ZEH基準の水準)」に適合する住宅には、太陽光発電システム等の再生可能エネルギーの導入は必要がないという点です。
2030年度にはZEH水準の新築住宅が、求められる時代に
2030年度以降は、政府は「ZEH水準」の省エネ性能の新築住宅になることを目標にしています。
2025年度にすべての新築住宅は省エネ基準適合義務化になります。しかし、省エネ基準適合義務化になった途端に、現行の省エネ基準で建築された住宅は、すでに最低レベルの省エネ住宅になってしまいます。
このように先の住政策が見える状況になりました。今、これからの住宅づくりの省エネ戦略を考える時期が来たのではないでしょうか。
参考に、「2030年までに新築住宅は、ZEH基準の水準へ」の記事もご覧ください。